| 3ワインの飲み頃とは? |
これらのことは、ある意味全て真実と言えると思います。ただし、飲み頃というのは本当に飲む側の個人的な嗜好が出てくる問題なので、本当に一概に処理できないものだと思います。とくに、20年以上熟成したワインの熟成香の好き嫌いには好みのはっきりと出る物もあります。
| 若いワインと若すぎるワイン(特に酸とタンニン) |
若い赤ワインの特徴はフレッシュな果実味です。ボジョレ・ヌーボーに代表される若飲みタイプのワインは、ぶどうをそのまま飲んでいるような爽やかな飲み口があります。
しかし、ボルドーの特級クラスのように最初から10年以上瓶熟成させることを前提としているワインのぶどうはとても果皮が厚く、糖も多く様々なエキス分が含まれている上に、内側を焼かれた樽の中で1年以上の熟成をさせます。
シャトーマルゴーやラトゥールのような超一流のシャトーのワインでも樽熟成中などは特にワインは酸とタンニンが荒々しく、一般の愛好家が美味しいと感じるのは難しい状態です。収斂性を持った舌をしぼめるような苦みを伴うことがあるからです。
ただ、その酸がそのワインの寿命をしっかりと支え、タンニンが柔らかくなり、様々な香味の成分に変化をしてワインを素晴らしい味わいへと変えていくのです。
また、コーヒーなどと同様に苦みの成分、タンニンには慣れと個人的な好みがあり、特に赤ワインになれていない人ほどこのタンニンによる苦味が厳しく感じられ、ワインになれた人ほど、タンニンをつらく感じにくくなります。
僕自身も、最初にワインの修行を始めた頃、ブルゴーニュ地方コート・ド・ボーヌの赤ワインの試飲会がありましたが最初の5本を過ぎたところで舌がタンニンにやられて麻痺してしまい、どうしようもなくなった経験があります。
今にして思えば、とてもタンニンの軽いワインのはずですが、それまでの日本人の普通の生活の中でそれほどタンニンの多い飲み物を集中して飲む習慣がなかったからだと思います。ただし、その後3ヶ月ほどで2時間にボルドーワインを30本テイスティングする事も可能になりましたから、慣れるのはさほど辛いことではありません。
また、タンニンになれてくると、同じタンニンのなかでもまろやかで質の高いタンニンとゴツゴツした荒々しい低質のタンニンの違いがわかるようになります。
赤ワインにはまっていく多くの人はこのタンニンの違いがわかってきて面白さを感じるようになるのです。
ボルドーよりも温かく雨の少ないカリフォルニアでは、完熟したぶどうが安定して収穫できる強みがあります。ぶどうが完熟すると、酸やタンニンが柔らかくなる傾向があります。ボルドーワインに比べてカリフォルニアワインが色がとても濃くヴォリュームがあるにも関わらず、まろやかで柔らかい新鮮な果実味に満ちているワインが多いのはこの事によります。
また、ワイン醸造学の学術的研究の進んだカリフォルニアでは、タンニンの質が柔らかいぶどうを造るクローンの研究が進み、その観点からも若い間からとても飲みやすくリッチなワインが造られています。
このように若くして飲みやすいスーパープレミアムワインの開発は世界的にワイン愛好家に受け容れられ、カリフォルニアワインこそが世界最高峰のワインだ、と主張する愛好家も日本を始め多く現れています。 また、味わいの国際化の中でフランスの専門家の中でもカリフォルニアワインが無視できない存在になっていることは事実です。
また、ヨーロッパの伝統的なワイン愛好家は、カリフォルニアワインの酸の少ないことがその寿命に対する疑問符と微妙で複雑なニュアンスに欠ける点が料理に合わせたときのバランスに問題があると主張しています。
白ワインのフレッシュな酸味は魅力的です。
特にソーヴィニヨンブランやミュスカデ種の持つリンゴ酸に由来する酸味は軽く、心地よい新鮮味があります。これらの酸味は5年ほど経過するとほとんどがぼやけてしまい、疲れたのペリとしたワインになってしまいます。試飲をしたときにリンゴの香りのするワインは今が一番の飲み頃、という根拠もここにあります。酸っぱすぎるワインには問題がありますが、酸味が信条のワインほど酸が足りないときは面白みのない物になりがちです。
ただし、シャルドネやリースリングのワインには酸味だけではない複雑なエキスが多く含まれているので熟成した変化をゆっくりと楽しむことが出来ます。
味わいも柔らかくしなやかで、とてもバランスが良くなり後味も長い余韻が続くようになります。
そのような熟成香と同じ様でもあり、またとても個人的な嗜好の差の出る香りが「老ね香」です。
このようなことでワインは若いワインから完全に死ぬまで様々な変化を遂げていきます。
どのような状態が最良なのかは人間同様難しい、というかそれぞれの楽しみ方、としかいいようのないものなのかもしれません。
ただ、どのような状態のものをどのような食べ物と合わせて、ということであればそれぞれ答えが出てくると思います。新しいワイン、古いワイン、それぞれ楽しんでみてはいかがでしょうか?